Special Vol.4 Special Q&A
〜『赤ちゃん育児なんでもQ&A』スペシャル〜
ちょっとした気がかりに 小児科医・坂本昌彦先生が“もっと”答えます!

1万人以上のママ・パパから寄せられた、赤ちゃんの病気やケアにまつわる質問に、小児科医・坂本昌彦先生がわかりやすくお答えし、好評な書籍『赤ちゃん育児なんでもQ&A』。本書では、「受診して聞くほどでもないけど、気になる」――そんな質問にも多数お答えしています。
今回は、読者のみなさんからの「もっと知りたい!」の声に応えて、同書に掲載されているQ&Aに加え、新たなQ&Aもご紹介します!

哺乳びんは消毒していますが、おもちゃはぺろぺろ舐めています。
病気をもらわないかと心配です。(生後4ヵ月)

感染症対策は、ゼロリスクを目指すより無理なく継続することが大切です
赤ちゃんは、いろいろなものを口で確かめる「探索活動」をします。いろいろなものを舐めないように赤ちゃんの行動を制限するのは現実的ではなく、発達面から考えてもおすすめできません。カゼなどの感染症にかかるリスクを少しでも減らしたいのが親心ではありますが、ゼロリスクを目指すのは難しいもの。感染症対策は、帰宅後や食事前に大人やきょうだいは手洗いをするなど、できることを無理なく続けることが大切です。
そもそも哺乳瓶の消毒については、基本的に、生後2ヵ月以降は食器と同じように洗浄して自然乾燥すればよいとされています※1。ただ、早産児や免疫が低下する病気の赤ちゃんは、生後2ヵ月以降も引き続き消毒するのが望ましい場合があるので、当てはまるときはかかりつけ医に確認してください。

同じ体勢で眠っていることが多く、腕や足がしびれそう。
体勢を変えたほうがいい?(1歳)

寝ているあいだも赤ちゃん自身が体勢を変えているので、しびれの心配はないでしょう
医療的ケアが必要なお子さんで長時間同じ体勢が続く場合は、褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれを防ぐために体勢を変えるなどのケアが必要です。こうした場合を除けば、寝ているときも不快なときは赤ちゃんが自ら動くので、しびれを心配して体勢を変えなくて大丈夫。ただし、うつ伏せで寝ているのを見かけた場合は、1歳の誕生日を迎えるまでは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを鑑みて、できるだけあお向けに戻して寝かせるようにしましょう。

青いあざが気になっています。そのうち消えますか?(生後4ヵ月)

場所によっては成長して目立たなくなります。気になるときは小児科で相談を。
あざは個人差が大きく、色や大きさ、できる場所によって対応が異なります。たとえば、おしりや背中にかけてできる蒙古斑(青あざ)は、おしりや背中などからだの中心に近いところほど早く消えやすく、一般的に10歳前後までには自然に消えることが多いです。
あざの場所や大きさによっては、レーザー治療や入院して内服薬で治療することもあります。気になるときは、小児科や皮膚科でご相談ください。

赤ちゃんのころに太っていると将来肥満になりやすい?(生後3ヵ月)

赤ちゃん特有のふくよかさは心配なし!栄養制限はかえって有害です。
小学校低学年(学童前期)における肥満の40%、思春期の肥満の70~80%が、大人の肥満につながるというデータ※2はありますが、赤ちゃん特有のふくよかさを心配する必要はありません。母子健康手帳に記載されている成長曲線の枠内に入っているようなら、平均体重より重くても大丈夫。はいはい、伝い歩き、ひとり歩きと成長するうちに活動量が増え、自然と引きしまった見た目になっていきます。
むしろ肥満への不安から授乳や離乳食を制限すると、栄養不足からからだの発達に影響することも考えられます。0〜1歳代は赤ちゃんがほしがるだけおっぱいやミルク・離乳食をあげましょう。成長曲線からはずれて増えていて心配なときや、逆に順調だった体重・身長の伸びが悪くなったときは、一度小児科や保健センターで相談してください。

口を開けていることが多いのですが、大丈夫でしょうか……?

数ヵ月続いていて気になるときは耳鼻科や小児歯科で相談しましょう
口呼吸は、1~4歳の11~56%に存在するとされます。年齢とともに自然に消えることがありますが、習慣が残ると歯やあごの発達への影響、口腔衛生の悪化や虫歯の増加との関連が指摘されています※3
また、睡眠時無呼吸をはじめとする睡眠障害との関連も指摘されています。睡眠は発育や発達と大きく関連しており、口呼吸は小児の発育や発達全般に影響を及ぼすことが指摘されています※4
したがって最近では、口呼吸に対して以前よりも積極的な治療介入が望ましいと考えられています。口呼吸の原因は、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる慢性的な鼻詰まりや、扁桃腺の肥大(2歳ころから大きくなりはじめ、6〜7歳で最も大きくなります)によるものが多く、これらに対する治療を進めていくことが重要です※3


(注)
※Q3、4、5は書籍『赤ちゃん育児なんでもQ&A』(赤ちゃんとママ社)から再掲載(一部加筆)しました。
※記事の内容は2025年2月時点の情報です。

※1 CDC(米国疾病予防管理センター):How to Clean, Sanitize, and Store Infant Feeding Items

※2 日本小児内分泌学会ホームページ「肥満」

※3 Lin L, Zhao T, et al. The impact of mouth breathing on dentofacial development: A concise review. Front Public Health. 2022;10:929165.

※4 山田洋輔, 長谷川久弥. 鼻呼吸障害および口 呼吸の治療 小児科医の立場から. JOHNS. 2014;30(4):447-51.

ご紹介した本はこちら

1万人のママ・パパが知りたかった! 赤ちゃん育児なんでもQ&A

  • 著者:坂本昌彦
  • 定価:1,540円(本体1,400円+税)
  • 判型・ページ数:四六判/192ページ

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監修PROFILE

坂本昌彦

小児科医。佐久総合病院佐久医療センター小児科医長。保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトチームの責任者。
保護者向けに子どもの病気やホームケアに関して、SNSやメディアでも積極的な発信を行い、同プロジェクト監修の無料アプリは約38万件ダウンロード、Xフォロワー数は10万人超(2023年10月現在)。
診療のかたわら帝京大学大学院博士後期課程で医療情報啓発の研究も行っている。
「教えて!ドクター」プロジェクトチームとしての著書に『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』(KADOKAWA)、自身の著書に『小児科医が教える「子どもを事故から守る本」』(内外出版社)など。『ななちゃんのてあらい』『くまのくま子さん』(赤ちゃんとママ社)、『きゅうきゅうばこの絵本』(金の星社)など絵本の監修も行う。