
- INTERVIEW
- SPECIAL Vol.5
『行動の背景を知る 発達特性のある子どもの保育』発売記念!
小西薫先生インタビュー
発達特性のある子どもとのかかわりや見守り方について、小児科医・小児神経外科医として多くの子どもを見続けてきた著者が、アドバイスをまとめた一冊です。保育関係者はもちろん、学校や児童発達支援の先生方、保護者の方にもおすすめの本です。医師としてだけではなく、放課後等デイサービスや病児・病後児保育の運営者、園医・校医としても活躍する共著者の小西薫先生に、本書の執筆についてお話を伺いました。

――2019年に逝去された小西行郎先生とご夫婦での共著という形で刊行されましたね。どのような経緯で企画が進められたのでしょうか?
小西先生:私たちは小児科医ですが、私は総合病院や療育機関、地域のクリニックなどで診療を行い、臨床を主としているのに対し、行郎は、大学や専門医療機関などで研究しながら診療に携わっておりました。その研究のなかで、医学、工学、心理学、社会学など多面的な視点から赤ちゃんを総合的にとらえる「赤ちゃん学」という学問の構築を目指し、「日本赤ちゃん学会」を創設しました。研究の拠点にすべく、赤ちゃん学研究センターの開設もしています。
その行郎が2018年、血液のがんの診断を受けて入院しました。その療養生活の中で、子どもの発達と神経発達症(発達障害)について、伝えたいことをまとめて、本をつくろうと「共同作業」を始めました。
行郎は神経発達症についてはすでに一度、新書版の本を出したことがありましたが、かなりの年数が経っていて、私たちの知見も社会的な認識も変容していたので、改めて書きためてきたものを世に出したかったんです。
――本にしたかったというのはどのような内容ですか?
小西先生:一つは赤ちゃん学を根拠とした、胎児から6歳までの育ちのメカニズムについてです。胎児期については研究成果を踏まえて仮説を立てていましたので、現段階での到達点として、『子どもはこう育つ!ーおなかの中から6歳までー』と題し2020年に出版しました。
もう一つは、発達特性をもつ子どもたちの保育に関することです。医学的な根拠を示しながら、子どもたちとのかかわり方や見守り方について、私たちが得た研究成果や経験をまとめたいと考えました。それが今回の『行動の背景を知る 発達特性のある子どもの保育』です。
この二冊を書くということを行郎と約束しました。その後、それまでにご縁のあった多くの方々のご尽力をいただきながら、こうして世に出すことができた本です。
――執筆にあたり、特に大切にしたのはどんなところですか?
小西先生:まず一つは、「子どもとはこういうもの」「育児とはこうするもの」といった固定観念にとらわれず、できるだけ科学的な根拠に基づいて伝えることです。
行郎が赤ちゃん学会を始める以前から、私たちは育児について、経験則や思い込みに影響されて、真に見るべき子どもの姿が見えにくくなっていると考えていました。
もちろん私たちも思い込みがないとは言えないかもしれないのですが、できる限り客観的に説明するよう、心して書きました。
もう一つ大切にしたのは、実践の積み重ねを踏まえることです。私たちの個人的な経験だけではなく、さまざまな分野の方々が特性のある子どもとかかわって経験や実践をされてきた成果を、情報として収集してきました。それを分かりやすくまとめてお伝えすることで、活用していただけたらと考えました。
――そのお考えは、本の構成からもよくわかります。前半が科学的な根拠に基づく理論編、後半が経験に基づく実践編ですね。
小西先生:はい。ただ、私たちはどうしても話が抽象的になってしまう傾向がありましたので、私たちの意図を汲んでいただけるイラストレーターさんのお力をお借りしてイラストで具体的にお伝えするようにしました。ゆったりとした楽しい気持ちで見ていただけたらと思っています。
また、今回は見開きで完結するような構成にしました。保育者の方々は多忙ですので、時間がない中でも今読めるところを読んで、続きはまた次の機会に…という読み方ができるようにしています。
――この本の「おわりに」では、「異常がないか見落とさないように子どもを”診る”から、少しずつ子どもを丸ごと”観る”ようになってきた」と書かれていますね。
小西先生:はい。行郎は、オランダ留学の折、赤ちゃんの自発運動を観察する手法をきっかけに、考え方を大きく変えたようです。同じころ私も、臨床を通じて子どもたちから教えられることがあると学んでいました。二人ともちょうど同じ時期に、ターニングポイントを迎えていたんですね。
私たちが学んだのは、子どもの症状として現れている部分や、保護者が問題だと感じてピックアップしたところを、ある特定の日に、一定の枠組みからだけ見るというのでは、子どもを理解したことにはならないということです。
「こういうサインを出しているのは、どういうことなのかな?」「こういう訴えをするのは、どういうことなのかな?」 と、子どもが示すさまざまな部分を一つ一つ見ながら、子どもを丸ごと「観る」ようにしました。そういう実践を重ねて、それぞれの部分がもつ意味を考え、確かめてきました。改めてその積み重ねを振り返りながら、新しい経験や知見を加えて、本にまとめることができました。
――読者のみなさまに、メッセージをお願い致します。
小西先生:科学的な視点をまとめて示しつつ、実践を提案している本です。子どもの成長や発達にかかわりのある方々に読んでいただいて、「ここはその通りだな」とか「いや、そうじゃないよ」とか、「こうだと思ってやってみたけど違う」と、検証しながら見ていただいて、それを何かの形でフィードバックしていただけたらありがたいと思います。
それによって、実践編の評価と改善ができて、ひいては科学的な視点の見直しができ、子どもをより深く観ることにつながっていくのだと思います。この本は現時点での到達点ですが、同時に通過点でもあります。保育にかかわる方というだけではなく、ご家庭でもぜひ検証していただき、教えていただけたら、一番ありがたいと思います。
――特性のある子どもたちについて、小児科医・小児神経科医の専門的な知見を分かりやすく伝えつつ、今すぐにでも実践できるかかわり方や見守り方を、かわいらしいイラストと読みやすい見開きページで示した本書。特性のある子どもとかかわる方なら誰もが、「これは、そういうことだったのか!」「こうしてあげるといいんだ!」と納得しながら読み進められる一冊です。いつでも取り出せるよう、職場の机や家庭の本棚に備えておくことをおすすめします。
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